北穂、涸沢岳
横尾本谷を遡上し左股カールから飛騨泣きを超えて3000mの稜線を歩く
二日目:横尾(5:40)→本谷橋(6:30 6:50)→二股(8:10 8:45)→北穂滝(9:50)→左股カール(10:47 10:55)
→A沢のコル(12:05 12:29))→飛騨泣き→北穂山頂(13:44 14:12)→涸沢岳(16:19 16:36)→奥穂山荘(16:47)
4時40分に目を覚まし外に出てみると見事な快晴! やったー! これはチャンスと予定通り本谷左股を遡上し、大キレットへ這い上がることを決め出発の準備をはじめる。 一般ルートより北穂山頂を目指す相棒二人と北穂の小屋で待ち合わせの約束をし、遅れることの無いように1時間程早く 5時40分に横尾大橋を渡る。 すでに何組かのグループは涸沢に向けて出発されているもよう。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
横尾大橋より川原沿いの道を歩き、昭和の時代に初登頂争いの舞台になった屏風岩東壁、正面カンテを左にみながら 緩やかに高度を上げる登山道を快調に進む。樹林の間からは北穂の頂が朝日の中に顔を覗かせている。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
横尾を出てからおよそ50分、対岸の屏風岩北壁スラブが後方になると本谷橋へと到着する。 何組かの登山者の方がここで朝食を取っておられ「おはよう」の挨拶を交わし、橋を渡らずに左岸沿いを少し進み遡上の準備。 本谷は2度目であり、前回は右股より横尾尾根にぬけており二股まではなんとなくルートが分かっているつもり。 へルメットをかぶった姿に怪訝な顔でこちらを見ておられる登山者の方に一礼し、本谷へと入って行く。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
想像していたよりも水量が多いようで渡渉を繰り返し、時々ドボンと足元のシリオ君に「溺れさすな」と怒鳴られること数度。 シリオ君をなだめながらしばらく行くと見覚えのある大岩があり,、右側より巻いて通過すると涸沢との出合いに到着。ここで一息! |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
右岸、左岸の歩きやすそうな場所を確認しながら遡上を続ける。 テープやペンキマークは無く自分の目と経験だけが頼りで、時々ルートを誤って戻ったり、岸に逃げたりし 本谷の傾斜が少しづつきつくなりだして二股の分岐到着する。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
本谷橋を出発してから1時間20分、途中涸沢の出合いで忘れ物をして20分程のロス、 渡渉に難儀しながらもなんとか予定通りに到着したかなあと一息。 これから向かう左股ははじめてのルート・・・何が待っているかわからず、途中シャリバテで体力を失うことの無いように 横尾山荘で作って頂いた弁当(パン、サンウイッチ)をしっかりと腹におさめて顔を洗い、シリオ君の紐を締めなおして気持も引き締める。 さあ行くぞシリオ君! しっかりルート案内頼むぞ! |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
左股に入り、100m程登ると流れは伏水となり大岩、小岩がぎっしりと埋まるV字のガレ場となる。 ほとんどが浮石状態でゴトゴトと動き足元が安定せず非常に歩きにくく、シリオ君も石に埋もれて苦戦状態が続く。 傾斜が増すと両足での歩行が厳しく、両手をつかってシリオ君のフォローをして進む。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
落石に注意し、何度もズルッとすべりながらも徐々に高度を上げてゆくと前方にズタズタに崩壊した雪渓が姿を現す。 いたる所にクレパスが出来ており雪渓上を歩くのは危険とシリオ君の意見を取り入れて左岸の傾斜をトラバースして行く。 足元が脆くズリ落ちないように必死にこらえて100m程の雪渓地帯を通過すると右側の岸壁より水を落とす北穂滝の下に出る。 ザレとガレとの格闘で縫い目が解れかけたシリオ君に「よく頑張った」とにねぎらいの言葉を掛ける・・・! |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
北穂池から落ちている滝で上部はナメ滝状になっているようであるが落差は相当あり、水量が多い時期は結構な迫力であろう。 マイナスイオンをもらいに滝に近づきたいが、落石の巣のような感じがあり静かに通過して行く。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
滝からは上部に見えるモンブランの様な岩峰を目指して進み、岩で左右に分かれた二股をキレットへ続く右のガレ場へ進路を取る。 左側は北穂池へのルートがあるらしいが今日はパス。 左股はさらに傾斜を増し、十歩進んでは立ち休憩を繰り返してゆくと左股最後の壁に突き当たる。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
最後の壁を三点支持で慎重に乗り越えると左股カールの広がりが目の前に姿を現わす。 南岳と北穂に囲まれたカールは言葉には表現できない素晴らしさで、涸沢カール、右股カールにも勝るとも劣らないものであると思う。 キレットからは何度も見下ろした山岳風景であるが、下から見上げるの初めてでありここに来れた感動がヒシヒシと湧いてくる。 左股ガレ場の激登りを頑張ってくれてシリオ君に感謝し、カール底の岩に腰掛けて一味違う南岳、キレット、北穂の勇姿を目っぱい楽しむ。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
正面に万里の長城のように続くキレット縦走路 | |||||||||||||||
カールからはキレット最低コルに抜けるのが常道であると事前に情報を得ていたのであるが、悩んだあげく 北穂高への最短ルートである長谷川ピークと飛騨泣きの鞍部A沢のコルへ向かうことを決めルートをじっくりと探る。 A沢のコルへ直接向かうルートを目で追うと足場が悪そうなので、岩がしっかりと重なり合った右の尾根状のガレ場を飛騨泣きに向けて 登り、上部でコルへトラバースするのがベストルートであると判断してシリオ君にGOをかける。 いざ登りはじめるとデコボコの岩が重なり合い足場を探るのに難儀し、200m程の標高差に思わぬ苦戦を強いられる。 標高が上がるほどに斜面は急になり、二本足から四本足歩行にスタイルが変化。 コルの高さまでようやく登り、そこから急斜面を冷や汗のトラバースでA沢のコルへなんとか到着。 ザックを下ろし休憩していると長谷川ピークを渡ってきた登山者の方に「熊が歩いていると思いましたよ」と声をかけられ思わずペコリ! |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
A沢のコルからは一般道となり飛騨泣きから相棒らの待つ北穂山頂へと足を向ける。 ここからは何度も通ったルートで、岩場はクサリ、フックでガードされ登山道もしっかり整備されているので左股やカールに 比べると緊張感は無いが、高度感があるので油断は大敵!三点支持を忠実に守りながら高度を上げてゆく。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
山頂に近づくにつれガスが出始めて視界が悪くなりカールはグレーのキャンバスに! 突然のガスの出現は雨男の相棒ミーとマン氏がすでに北穂山頂に到着している証拠かなと最後の壁をひたすら登り A沢のコルより1時強もかかってバテバテで北穂小屋へと到着、相棒二人と再会!1時間以上も待たせてごめん! |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
賑わう小屋のテラスでラーメンを食べ、頂きを踏んでここからは3人パーティで宿泊予定の穂高山荘へ向かう。 北穂山頂からは残念ながらガスの為展望は得られず。 ガスがなければ・・・@北穂山頂より槍を望む A大キレット長谷川ピークと飛騨泣き ちなみに8度目の山頂であるが今回も含めて5回が晴れで、ミーとマン氏と訪れた3回のみがガスで視界なし! あらためて雨男ミーとマン氏の偉大な力に感心する。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
度南稜分岐からドームからの長い岩場を下り、岩こぶを2つ程超えてガレ場の稜線を進み最低コルで小休止を取る。 トイレ派好きNO1のノム氏は北穂登頂だけではスタミナが有り余っているのかすこぶる元気でいつの間にかはるか先を登っている。 涸沢カールから見上げると見事な三角錘である涸沢槍の岩場を三点支持で通過し、鞍部よりの急な岩場を登りかえして涸沢岳に到着。 北穂から涸沢岳の間は、大キレットより厳しいと思っているのであるが、初めての通過になる相棒二人には何のプレッシゃーもないようである。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
3000m級の少ない北アルプスでは奥穂、槍、ジャンに次ぐ標高を誇る涸沢岳であるが穂高の冠が付いていないのが要因か 北穂、前穂、奥穂に比べると人気は今ひとつで、穂高山荘より15分で登れるに寄らずに下山する人も多いらしい。 今日は雲に隠れて展望はないものの山頂より眺める奥穂、ジャンは絶景なのになあとそんなことを思いながら ボーとしていると突然ガスが晴れてその絶景が姿を現わす。 縦走最後に涸沢岳にプレゼントをもらい直下の穂高山荘にザックを下ろす。 |
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||