三俣の小屋で静かな朝を迎える。目を覚ますと周りの人が誰もいないではないか!寝過ごした! いそいそと起きて外に出てみると晴れ上がった空に槍の穂先がくっきりと姿を現しており、多くの人がすでに出発をしている。 早立ちの予定で用意して頂いた弁当を小屋外のベンチで食し、先行者を追いかけるように予定より20分遅れで鷲羽のきつい登りに向かう。
|
|
|
見事に晴れ上がった空に槍の穂先が! |
朝一番の急な登りが待つ鷲羽岳 |
|
朝一からの急登はさすがにきつく何度も立ち止っては山頂部を見上げ息を整えて高度を稼いで行く。
前方右手の樅沢岳の上に槍穂高連峰が霞の中よりその3000mの稜線の全貌を現わしはじめると山頂が近づき空が次第に明るくなってくる。
ガレ場とザレの続く登りはきつく身体は悲鳴をあげているが、心は反対にウキウキ気分が高まってくるのが不思議である。 双六岳の向うに顔のぞかせてこちらをみている笠さんと足元のヨツバさんに思わず『おはよう』の声がでる。 |
|
|
|
ヨツバシオガマ |
笠ヶ岳がひょっこりと顔を見せる |
|
頭上から人々の歓声が聞こえ出すと山頂が近くなり、最後のガレをひと登りすると もう見上げても青空しら目に入らずてっぺんへと到着する。
はじめて踏む鷲羽岳からの展望はすばらしく南部のほとんどの名峰を見ることができる。
先程までのキツサはどこかに飛んでしまい狭い山頂の右に行ってはパチリ、左に飛んではパチリとデジカメのボタンを夢中で押す。 この頂から眺める槍穂高連峰は神々の住むような幻想的なたたずまいを見せ一生忘れることはないだろう。 岩に腰掛け、槍穂高を眺めながら飲むコーヒーは別格の味で時間が止まっているかのように静かである。
|
|
鷲羽岳山頂より槍穂高連峰を眺める |
|
|
|
|
|
祖父岳の向うに広大な山容の薬師岳 |
カールを抱く黒部五郎岳 |
北アルプス最深部の名峰水晶岳 |
|
後髪を引かれる思いを感じながら鷲羽の頂を後にワリモ岳に続く稜線を一旦鞍部に下って行く。鞍部からは登山道脇に咲く高山植物を 楽しみ山頂を左から巻いてゆくと今度は前方のスライラインの向うに黒々とした山容の水晶岳がさらに大きく見え出してくる。
しばらく下ってワリモ北分岐にザックをプールし、サブザックに雨具と飲料を詰めてワリモ乗越へと続く穏やかな道へと足を向ける。
|
|
|
ワリモ岳への登り |
ワリモ岳の登りより鷲羽岳を振り返る |
|
|
ここ十数年登りたくてもなかなか登れずにいた水晶岳が近づいてくると早く頂を踏たい気持ちが強いのか足が自然に早くなってしまい 自分自身にゆっくり歩こうと言い聞かせてワリモ乗越を通過して行く。
乗越からはお花畑の斜面を登り切るとこじんまりとした水晶の小屋に到着する。
|
|
|
|
ワリモ北分岐…ザックをプール |
乗越付近の登山道…バックは鷲羽とワリモ |
祖父岳の下に雲ノ平 |
|
小屋には帰りに寄ることにしそのまま水晶への稜線に向かう。 水晶への稜線はまさしく別天地のスカイラインであり、左眼下に雲ノ平の広がりと黒部五郎を見ながら、右に裏銀座の山々と
風を感じながらの快適なトレッキングが続く。足元には頂へいざなうように数々の花がフラワーロードを作っている。
|
|
|
水晶へ伸びる稜線 |
稜線からは黒部五郎と雲ノ平が |
|
|
|
水晶へのピークが近くなると次第に岩が目立つようになり、黒岳の名前通り黒っぽい岩の間を登って行く。
梯子を登り切ってピーク直下の岩を巻いてゆくと山頂の標識が見え、ガレ道をひと登りして8時47分2986mの頂に立つ。
長年あこがれていた山頂はさすがに展望も良く、踏み跡を残せた満足感に浸りながら至福の時間を過ごす。 頂の向うには赤牛岳に向けて読売新道が続いており、更なる課題を与えてくれいるようだ。 |
|
|
|
ピークへは岩の間を歩く |
梯子を登り岩を巻いてゆく |
山頂への最後のガレ道 |
|
|
|
|
水晶岳山頂 |
山頂標識 |
|
|
水晶山頂より雲ノ平と黒部五郎岳 |
|
|
賑やかに登ってきた若者のグループに山頂をゆずり十数年間心の片隅に燻ぶっていた思いを達成し、満足感を胸に岩道を下る。 水晶小屋への帰路は槍の穂先を目線の先にとらえて裏銀座の山並を左に見ながらのゆっくりトレッキングとなる。
岩陰に建つ水晶の小屋が山岳風景とマッチしなんとも言えぬ雰囲気をかもしだしており…ああいい感じ!
|
|
|
槍を見ながらの快適山歩 |
ロケーション抜群の水晶小屋 |
|
小屋の売店で記念の日本手ぬぐいを調達し、ベンチでしばしの休憩をして裏銀座の山々に別れを告げメインザックの待つ
ワリモ北分岐に一気に下って行く。分岐で再びメインザックと再会し背中が重くなった身体でガレ道を急降下して岩苔乗越に降り立つ。
この乗越からは黒部源流、高天ヶ原、雲ノ平への三つの道が出ており黒部源流の名前に少し心が引かれて迷うが、 日本庭園から源流部へ下ることが出来るので当初の予定通りに祖父岳経由雲ノ平への道に足を向ける。 |
|
|
|
祖父岳へなだらかに続く稜線 |
岩苔乗越…後ろは薬師岳 |
黒部源流と三俣蓮華・・・乗越より |
|
祖父岳へは緩やかな登りが続き途中に雪田もあり高山植物を楽しみながらののんびりハイクとなる。
雪田手前で二人連れの登山者の方とすれ違い挨拶を交わし、小さな梯子を登ってゆくと雷鳥が迎えてくれる。
下山後のこ雪田付近ですれ違った方がネットの山友人である『ふくし』さんとわかる。 お互いにネット交流があるものの面識がなくお話ができなくて誠にに残念! |
|
|
祖父岳へ続くお花畑の道と雪田 |
早朝に歩いて来たワリモ岳と鷲羽がすぐ横に |
|
|
祖父岳山頂はたくさんのケルンが立ちどこがピークなのか少しわかりにくい。 ガスがでるとイヤだなあと思いながらピークを通過し眼下に広がる雲ノ平を見ながらガレ場をジグザグに下って行く。 その雲ノ平は色々な庭園の名前がつけられているのがなるほどと納得する自然の美しさを見せてくれる。
|
|
|
祖父岳山頂と頭を出す鷲羽岳 |
雲ノ平の広がりと薬師岳 |
|
木道に下り立つと先程頂を踏んできた水晶岳が雲ノ平を見下ろすように聳えており
薬師岳、黒部五郎岳、祖父岳、三俣蓮華岳など南部の名峰群に囲まれたまさしく別天地である。
這松帯に続く木道を軽快に歩き雪渓の残る日本庭園で大の字になり、 次にここを訪れる時は滞在登山で家族でのんびりとしたいなと空を見上げながら思う。 |
|
雲ノ平を見下ろす水晶岳 |
|
|
|
|
薬師岳と雲ノ平 |
祖父岳 |
雪渓沿いに続く道とと三俣蓮華 |
|
日本庭園を気持ちよく歩き、鷲羽が再び大きくなりだすと登山道は急降下をはじめて
ザレとガレの混じった急な道を躓かないように20分程ジグザグを繰り返して待望の黒部源流部に到着する。
あの急流で有名な黒部川もここでは小岩の間に静かな流れを見せておりなぜかほっとした気分にさせてくれる。 源流の水を頂戴して作ったラーメンとコーヒーがこれまた最高の味を与えてくれる。
|
|
|
日本庭園より鷲羽岳とワリモ岳 |
黒部源流部…静かな流れを渡る |
|
|
|
|
雲ノ平から源流への下り |
黒部川水源地碑 |
雲ノ平からの下りを振り返る |
|
源流部からは樹林帯をひと登りして三俣の小屋に戻る。昼を少し廻った時間にもかかわらず小屋前には大勢の登山者の方がおられ
山や花の話題で賑やかなサークルを作っており、老若男女どの顔にも笑顔がよく似合っている。
山はやっぱりいいなあと思いながらも今夜の小屋泊まりは大変と少しきつくなるが新穂高まで下るこころに芽生えてくる。 黒部五郎へ寄れず残念気持ちもあるが家族で来たときの頂を残しておこうと自分で納得し、
とりあえず双六小屋へと三俣蓮華の分岐へ向けて
だらだらの坂を登って行く。
振り返ると鷲羽の下に広がる樹林の中にテント場が見え、次はあの場所にテントを張り思う存分山を楽しもうとあらためて思う。 三俣の分岐からはガスの湧く蓮華をパスし、巻き道から双六小屋へと向かう。 |
|
|
鷲羽岳とテント場 |
花の多い巻道と鷲羽岳 |
|
3時30分双六の小屋に着くとさすがに最盛期、夏山を楽しむ大勢の登山者で賑わいを見せており、
ここに泊まり明日槍に寄って新穂高に下山も考えていたのであるが、このまま下る方がいいと判断し小屋をあとに弓折稜線へ。
暗くなる前になんとか新穂高へと弓折稜線を急ぎ花見平を通過して、弓折乗越から鏡平へと下る。 鏡平の小屋で昨日のアルバイトの女性に挨拶と思い売店を覗くが夕食時で忙しそうなので声を掛けずにワサビ平へ!
|
|
|
|
|
弓折稜線より鷲羽に別れを! |
お花畑で遊ぶ雷鳥の親子 |
弓折乗越 |
|
鏡池で靴紐を締め直し、ザックにデジカメをしまい込み熊の踊り場、シシウドヶ原と順調に下ってゆく。
途中にまだ登ってこられる人が何人おられ鏡平に着く頃には日が暮れているのではと自分のことも忘れて少々心配になる。
陽の明るいうちになんとか伊藤新道を抜け、明かりのポツンとついたワサビ平の小屋を左に見て林道を急ぐ。 中崎橋からは懐中電灯のお世話になり、19時50分新穂高温泉バスターミナルに下山。 |
|
|
|
すでに温泉は新穂高も平湯も店じまいをしており5時間後入浴の予約を家に入れて一路京都に向かう。 |
|