奥穂から西穂へ
天候:快晴

2日目:奥穂山荘(5:30)→奥穂高岳(6:05 6:20)→ロバの耳(6:55 7:05)→ジャンダルム(7:20 7:40)→天狗のコル(8:31 8:40)→
天狗岳(8:57)→間天のコル(9:12)→間の岳(9:40)→西穂高岳(10:45 11:05)→独標(11:50 12:05)→
西穂山荘(12:50 13:20)→ロープウェイ駅(14:00)


翌朝4時30分に目を覚まし外に出てみると・・・空が今にもあふれるのではないかと思うぐらいの星が輝き、上げた首を下げるのを忘れてしまう。
快晴だ!と心の中で叫び西穂への縦走を決め、5時30分南アと八ヶ岳の間より登るご来光を楽しんだあと山荘脇のはしごに取り付き奥穂へとと向かう。

 下から見ると垂直に見えるはしごであるが登りだすとそんなに急に感じることなく三点支持を守って通過して行く。
はしごを登りきると岩場の急登が連続しており、浮石やつまずきに注意して進むと前方の小さなリッジの向こうに独特の雰囲気を持つジャンが
姿を現す、振り返ると北穂と槍が目線の高さにあり、足の上がりの今ひとつの老体を奥穂へ後押ししてくれているようである。

小さな尾根を左折れて緩やかなガレ場をゆっくりと登ってゆくと青空の中にひときわ大きなケルンの目立つ奥穂山頂3190mに到着である。

山頂は、360度の展望で北アルプスの名だたる頂はもちろん、南アルプスから八ヶ岳、乗鞍から御嶽、笠を越えて白山まで見渡すことができ、
五度目の頂きはすばらしい山の休日をプレゼントしてくれているようである。
北アルプスの夜明け 涸沢岳と北穂の間に槍が

先に登られていた女性登山者の方と記念写真を取り合い、、山頂の空気を一杯吸い込んだあと
吊尾根から上高地に向かわれる女性を見送り西穂へと足を向ける。
大ケルンよりジャンダルムに向けてギザギザの岩尾根を足元に注意し、しばらく進むと
両側が鋭く切れ落ちた細い岩場に着く、馬の背である。

この岩場はその名のとおり切立った岩が連なり、長谷川ピークの鎖場を
細く急峻にしたような感じで人ひとり通るのがやっとに見え、岩を跨ぐようにして慎重に下るが、
手足を動かすたびに緊張感が走り、三点支持、三点確保と自分に何度も言い聞かせる。
難所を通過すると一旦鞍部に急下降し、ロバの耳への垂直の登りに入る。
奥穂山頂の大ケルン
ジャンに向かう道 ギザギザの登山道 馬の背の高度感 馬の背

スタンスとホールドを確認し、ここも三点支持を忠実に守って鎖を補助的に使いながら登っていくと
足元がストーンと切れ落ちた岩棚のトラバースに移り、バランスを崩さないように
慎重に通過して、昨年寄り忘れたロバの耳へと登る。

ロバの耳から見るジャンダルムは天を突くようにせり上がり、
何者も寄せつかない威圧的な雰囲気を持っており、下りるのがもったいないが
まだ先が長く10分程展望を楽しみジャンダルムに向かう。
耳への垂直とトラバース
ロバの耳よりジャンの雄姿 登れるのかなあと思う鋭い岩峰のジャン

奥穂側からは登れそうにないジャンダルムも西穂側に一度巻いて登ると
簡単に登ることができ憧れの頂に2度目の踏み跡を残す。

ピークからの展望は、奥穂に勝るとも劣らずで
特にここから眺める奥穂の山容はどっしりとして北アルプスの盟主にふさわしい。
当初の予定どおり穂高山荘で作ってもらった弁当を食べるが
360度の展望をひとりじめにした3163mのテーブルは
自分にとって最高の朝食となる。
ジャンダルム山頂
重厚な奥穂高岳 槍への稜線 笠ヶ岳と右に黒部五郎

なごり惜しいのであるがピークから一度分岐にもどりコブの頭から、ガレと砂礫のすべり易い長い、長い下りを浮石に気をつけて進む。
ルンゼ内のクサリ場を通過して両側の切れ落ちた岩尾根をバランスをとりながら渡り飛騨側の急斜面を下りきって天狗のコルに到着する。

目の前には天狗の頭に向けて垂直のクサリ場が控えており、どこを登ればと考えながら一服タイムをとったあと天狗岩への垂直の壁を
三点支持で慎重よじ登るとさらに険しい岩場が現れ、躓くこともちょっとしたすべりも禁止の緊張感が続く。ホールドとスタンスを確認しながら
この岩場を登りきりお気に入りの場所である天狗岳の山頂に到着する。

コブの頭からの長い下り ルンゼ内のクサリ場を下る 岩尾根を渡る 天狗のコルから笠を望む
天狗岳山頂への岩場 天狗岩山頂2909m

天狗岳山頂から少し進むと間天のコルに向けて急なスラブの下りである。上から見るとちょっとドキッとするがクサリを補助的に使うと
見た目よりも楽に下ることができ有名な逆層スラブを通過する。間天のコルからは再び急な登りになり脆く今にもくずれ崩れ落ちそうな
岩場が連続する。とろこどころにクサリはあるが自分の手と足と目で岩を確認し、ここを慎重に登ると岩に間の岳と書かれただけの山頂に着く。
山頂標識はないのであるが、それがかえってこの頂の値打ちを感じさせてくれ、山頂より今歩いて来た奥穂からの道を振り返ると満足感が
あふれてくる。
逆層スラブの下り 逆層スラブ全景 スラブを下る登山者
間の岳への脆い岩場 左の岩を登る 上の岩を超えると山頂 間の岳山頂と山休

間の岳からは西穂高がすぐそこに見えるがまだ赤岩岳超えがあり気を緩めることなく細いミニ尾根を渡り赤岩岳の登りに入っていく

ここではじめて西穂側からの登山者とすれ違うがどうもこのコースははじめてのようで、ガレた岩場を通過できず苦戦されているようで、
時間的に少し不安だあと思いながらこれからきついですから気をつけてと声を交わし、山頂へと向かう。 

赤岩岳からは西穂高が目の前に聳えもう危険な場所はなくゆっくりと登って行き、
穂高山荘を早朝5時30分に出発しおよそ5時間15分をかけて西穂の頂に到着する。
西穂山頂には大勢の登山者の方がおられ、快晴の空の下すばらしい山の時間を過ごされているようである。
赤岩岳へミニ尾根を渡る 西穂高岳 西穂から独標への稜線 岩場で休憩する鳥

西穂山頂からはダラダラのガレの道を下り、小さなピークを2つ超えて三角錘のピラミッドピークを通過し、前方の焼岳と乗鞍を眺めながら
独標への稜線をのんびりと歩く。眼下には上高地の緑が広がり思わず鼻歌が出るくらいに気持ちがよい。独標にも大勢の登山者の方がおられ、
あちらの頂き、こちらの山とみんな笑顔でわいわいがやがやと楽しくおしゃべりされていてその輪の中に入り『山はいいなあ』とあらためて思う。

ピラミッドピークより西穂 独標から山荘への登山道 丸山へ穏やかな下り
独標からは穏やかなザレ道を下り、
西穂山荘で昼食を採ったあとロープウェイで新穂高に下山する。

平湯の森で露天風呂に入り山の汗を流し京都に帰る。